スプリング♂017


「アナタ、自分が物凄く
運が悪いって
思っているでしょう?」


大正ロマンが

私の気持ちを
さも見透かしたかのような
モノ言いをしてるけどッ。


こういう状況に
追い詰められれば

誰だって
そう思うに決まってますッッ。


「いい?

私を欺こうなんて
マネをしても

無駄だって
よくわかったでしょ?」


大正ロマンが
私の正面の席に座ると

真ん中に
エメラルドの指輪を置いた。


「先生ッ、クリーニングにも
出てないそうですッ。

今から家政婦全員に
連絡を取って…!」


「その必要はないわ」


大正ロマンは
タバコに火を点けて

「すうううううううッ」

深くタバコの煙を
吸い込んで

「ふうッ」

乱暴に吐き出した。


「ですが…」

メガネっこが
大正ロマンの返答に
戸惑っている。


「紬もエメラルドも
同じ犯人の仕業だから」


って。

もしもしもしッ。

さすがに着物なんか
どこにも隠しようが
ないと思うのですがッッ。


「まさか、この子が…?」

メガネっこの視線が
汚いモノでも見るように

私のカラダを
貫いてきてッ。


「この子が盗んだなんて
誰が言いました?」


「えッ!?」


大正ロマンの
意外過ぎるひと言に

思わず

メガネっこと
ハモってしまったッ。


「着物を盗んだ犯人は
わかっているわ」


私には何でも
お見通し、って

根拠のなさそうな
発言に

一抹の不安を覚えるのは
私だけでしょうかッ。