…私があの現場で見たモノ。

宅配便の
おおきな箱…。


「それで
あの家政婦の姿が
見えないんですねッ。

先生のお留守を狙って
なんてさもしいマネをッ」


…でも。

あの箱は着物を入れるには
あまりにも大きな箱で。

箱自体も
パンパンに
膨れ上がっていた。


着物を運ぶくらいなら
台車なんて
小回りの利かない
目立つモノを

わざわざ
持ち込む必要なんて
あったのかな。


「……」

なんか変だ。

この事件。


何が変なのかは
わからないんだけど

何かが
矛盾している気がする。


「…証拠もないのに

むやみやたらに
ヒトを疑わない方が…」


「じゃ、トーコさん。

アナタは
ご自分が盗ったとでも
おっしゃりたいのかしら?」


「そういう意味じゃッ!!」


「紬もこの宝石も

あの家政婦が
ずっと大切にしていた
モノらしいから」

売りつけておいて

今になって手放すのが
惜しくなったモノの

取り戻すお金がない。


だから盗んで
自分の手の中に取り戻した。


「…そう犯人の動機を
説明して差し上げれば

満足戴けるのかしら?」


って。

大正ロマンは
タバコの灰を

私のアタマの上に
落としながら


ふふふ、と笑った。