「そう言えばッ。

なくなったモノって
全部、さっきの家政婦から

先生が
高値で買い上げてあげたモノ
ばかりですよねッ」


恩をアダで返すなんて
信じられない愚行だ、と

メガネっこは
憤慨をしているけれど。


…本当に
高値で買い上げて
くれていたとしたら

それは本当に恩人で。


自分を家政婦として
雇用までしてくれている
ヒトを

こんな形で
裏切ったりなんて

出来るモノなのだろうか。


しかも

自分達がやりました、って
こんなにもわかりやすい
盗みの手口で。


…それに。

このテーブルの上に
置かれたエメラルド。


そこまでして執着して

疑われるのを承知で
取り返そういたモノにしては

あまりにもアッサリと
手放しすぎのような気がする。


…まるで

自分達がやったと
わかっても

アナタは
私達を追及出来はしない、と

言わんばかりな…。


「ヒトに利用されたと
わかって

そんなにもショック?」


テーブルの上から
視線を大正ロマンに移すと

大正ロマンの顔には
さっきまでの笑みが
消えていて。


「アナタはね。
そういう星の持ち主なの。

利用される為に
生まれてきた人間だと

いい加減、自覚なさい」


…何が言いたいんだろう。


「タカヒロさんはね。

アナタのコトなんて
好きじゃないの。

勘違いしないでね」