セイが
あ〜あ、って
半分同情している。


「…そういうのって
犯罪じゃないんですか?」


私の口を突いて出た疑問に


「……」
「……」

先生もセイも黙っていて。


…それが答えなんだ、って
さすがの私にもわかった。


「この着物もカップも。

コヤツらに
別に返してやっても

よかろうに」


ジイサマがステッキで
紬の着物を箱から出して

オバサンの膝の上に乗せる。


「こんなモノッ…!」


別に惜しくはないけれど。


「あのオンナにだけは

袖を通させたくは
なかったから…ッ!」


オバサンの怒りは
納まるワケもなく。


「…気の毒なコトをしたの。

金で済むコトなら

示談と言うコトで
許してくれはしまいか?」


おじいちゃんが
胸元のポケットから
小切手を出して。


「会社を
もう一度立ち上げたいと
言うのであれば

チカラにもならせて
貰いますぞ」


おじいちゃんの
こんな真面目なトーンの声

初めて聞いた。


…不審者に侵入されても
警察沙汰にはできない

セレブリティー達の
さまざまな事情。


泥棒を捕まえても

警察ではなく

警備会社を呼ぶ
このシステムは

そんな要望が作り出した
モノだったのか。