結婚式の式場。
婚約指輪に結婚指輪。


「縁起のいい店から
買いなさい」

さまざまな業者からも
紹介料を取ったりして。


「あのオンナは
占い師なんかじゃないッ。

ただの金の亡者よッ!!!」


オバサンの
甲高い叫び声が

部屋中に空しく響いた。


「…後は私が話すから」

興奮するオバサンのアタマを
オジサンが抱き寄せる。


「…ウチの姪っ子が
先日、結婚したんですよ」

今度は
オジサンが淡々と話し始める。


「あれ程、結婚相手に
高望みしていた子が

ずいぶん冴えないオトコと
結婚を決めた、と思っては
いたんですよね」


結婚式で
大正ロマンからの
祝電が読み上げれていて


「挙式後
新婦の親を問い質したら

こういう
カラクリだった、と」


騙された自分達が
バカだった、と

もう忘れるつもりだったけど。


「自分達が黙るコトで
新たな被害者が出るんだ、って

わかったから」


資料が隠してある部屋の
合鍵を作って

同僚の家政婦の飲み物に
下剤を混ぜて早退させて。


「…それで着物だけじゃなく

これだけの資料を
持ち出したというワケか…」


先生が溜息をつきながら
箱の中から

ファイルを取り出して。


「…興信所にも
相談者の身の回りについて

事前にいろいろ
調べさせていたんだな」


どうりで
大事な着物が盗まれたと
わかっても

大正ロマンは
警察に知らせようとも
しなかったワケで。


証拠書類が警察に
渡っていたら

今度は
自分の身が危うくなる…。