謙虚に
一生懸命働いていた
善良な人間が
一方的に
金を巻き上げられたみたいな
勘違い的被害者意識は
やめた方がいい、って
セイがひとりで
自論を展開しているけれど。
それが
たとえ公正な目で見た
厳しい世の中の
現実だとしても
…さっき
セイの目の前で
私に暴力をふるっていた
ようなオンナを
結果、庇ってしまっている
この事実が
なんだか
とっても複雑で。
淋しかった。
きっと
セイがそうしているのは
コレはあの大正ロマンだけの
問題ではなく
ねずみ〜らんどの先生の
身内のスキャンダルだから。
そう自分を
納得させようとして
みるんだけど
…やっぱり
悔しい。
「トーコちゃん。痛むの?」
「え?、あ!」
先生に指摘され
自分の蹴られた脇腹を
無意識に押さえていたコトに
私は初めて気がついた。
「やっぱり
ちょっと診ておこうか。
トーコちゃんは我慢強いから
骨が折れてても
痛い、って言わないだろ?」
…確かに。
私は今まで
たくさんの大怪我をして
先生に
治療して貰ってきたけれど。
先生の前で
泣き叫んだコトなど
なかったかも…。
でも、それは
あまりに怪我が凄すぎて
叫び声ひとつ
上げられないくらい
ショックだったからで。
「トーコの痛覚は
トカゲのしっぽ並だからッ」
その憎たらしいツッコミに
思わずセイの顔を見るッ。
私の背中に当てられている
先生の手に
セイの厳しい視線が
向けられていてッ。
…そのおおきな目が
コワイですッ。
「肋骨が折れていて
内臓を傷つけたら大変だ」