「たぶん他にも
家政婦がいたんだよね?

下剤でも飲ませて
早退させたのかな〜」


「……」


…確かにセイの言う通り

家政婦がひとり
早退していたんだ、と

メガネっこが
先生に報告していたけれど…。


「……」

どうして
オバサンは反論しないのか。


下剤なんか飲ませたら
それこそ問題で。


「この資料だって

カギの掛かった部屋に
厳重に保管されていたと
思うんだけど。

部屋にはどうやって
入ったのかな?」


「……」


「事前に合いカギなんか
作っていたら

計画性があったと
みなされて

あのオンナよりも
遥かに罪が重くなるけど」


「そんな…!!!!!」


セイの詰問に
言い返したくても

言い返せない
オバサン達がいて。


「やっぱりこのヒト達
警察に引き渡そうか」


セイが
テーブルの上に乗せてあった
手錠を手にして

こっちに近づいてくる。


被害者なのに

気づけば
加害者になっていて。


オジサン達が
ちいさくなって

震えてる。


それは

騙されたという
恨みの気持ちより

正義感が勝っての
行為だったハズなのに。


どうして
こうなっちゃったのか。


「手錠なんて掛ける
必要はないよ」


先生が
複雑そうな笑みを見せて

オバサンの手を取って
イスから立ち上がらせた。


「…やっぱり家まで
車でお送りしますよ」