先生は
大正ロマンのコトを
苦手だ、と言っていたけど。


でも

だからこそ正直に


自分は究極の面食いで

美に関しては
究極を求めているから

ちょっとやそっとの美人とは
暮らせない、って

言えばよかったんじゃ
なかったのかな。


「……」


写真の中

私を抱きしめている
セイのカラダに掛かってる

乱れたシーツが

何だか
天使の羽根みたいに
見えてくる。


崇高な美。

神様の創られた
最高傑作。


大正ロマンが

こんな絶対的な美の存在を
見せつけられて
いたんだとしたら


美しさを求めてしまう
先生の生き方を

否定したりは
できなかったと思う。


…やわらかな
やさしいセイの表情。


出来すぎの
創りモノのような顔が

その豊かな表情によって

ますます
その美しさに深みを
増していて。


私はそっと
写真の中のセイの
長いまつげに触れる。


「…先生が撮る
セイの写真って

みんな
お人形さんみたいだとばかり
思っていたけれど」


この写真の中に
切り取られた

一瞬のセイの表情は

最高で。


…惜しいかなッ。


私のハダカさえ
写っていなければ

いい写真だ、って

素直に言えるのにッ。


「…おしり〜。
写っちゃってるからなあああ」