…この暖かい部屋の中で
相変わらず
毛皮のコートを着たまま
しかも
両手でしっかり
中身を隠すようにして
ソファーの上で
ふんぞり返っているけれど。
…それは
意地でも
長居はしません、って
アピールしている
つもりなのか。
その表情は
あくまで固くって
気のせいか
額に汗まで
滲ませているようにも
見える。
先生の推察する通り
診察をさせるコト自体は
反対ではないのか。
先生のするコトを
セイは黙って見ていて。
…それは
私の反応を
観察しているのか。
さっきから
確実に何度も
私と視線が合っている
ハズなのに
お前なんかを
見てはいない、って
言わんばかりに
私と目が合う度に
焦点をボカしていたりして。
…セイの意図が
わからない。
セイの気持ちが
見えないよ。
「…大丈夫みたいだね」
どこも
軽めの打ち身って
カンジだ、って
先生のそのセリフに
反応するように
セイが
ソファーから立ち上がる。
足早に
こっちに近づいてきたかと
思ったら
先生の足を
乱暴に払って
私のスカートを取り返した。
「ほら!
トーコ、帰るぞッ」
私の胸元に
スカートを押しつけて
セイが踵を返した
その瞬間。
「キミの診察がまだだよ」