「…とにかく
このまま帰すワケには
いかなかったからね。

トーコちゃんが
留まってくれたら

セイくんも
ここに居残るだろう、って

とっさに
トーコちゃんの荷物を
人質にとったんだけど」


ウチに引き入れたモノの

「まさか怪我をするなんて
思いもしなかったから」


あのオジサン達に

後でゆっくり
事情を聴こうと
ウチの中に
入れてしまってたコトを

後悔した、と

先生は
そう白状する。


「骨折している
自覚があったんじゃ
ないのか?」

「…カンケイないだろッ」


嫌がるセイから

先生が
強引に毛皮を剥いだ。


「……」

…セイのスーツの
背中の部分が

ぐっしょりと濡れているのが

ひと目でわかる。


「…荷物を探すフリをして

やたらと
キッチン周りばかりを
調べていたからね」


毛皮もいっこうに
脱ぐ気配がなかったし


「かなり酷い状態
なんだな、って

あのオジサン達の釈明を
聴きながら

気になって仕方なかったよ」


予想外に
長々と続いた
オジサン達の話。


「痛みを誤魔化す為に
積極的に
会話に参加してたよね」


先生は
そんな話をしながら

セイのスーツのジャケットを
脱がそうとして


「いいだろッ!
そんな話ッ」

セイにそれ以上の行為を
拒絶される。


「セイッ!
ちゃんと診て貰ってッ!」


私がセイのカラダを
押さえつけると


「うあッ…!!!」

セイが初めて
痛みに声をあげた。