先生だって
お互いのカギが
合鍵になってる、って
指摘しただけだ。
「留守中に
忍び込んでいるだろう、って
責めてたワケじゃないしッ」
合鍵を持ってるのは
もしものときの為だ、って
言い訳だって充分に出来る。
「…好きなヒトに
これ以上
幻滅されるようなマネなんか
できるワケないもんねッ」
私はアタマの中を
そう都合のいいように
整理して。
「よしッ!」
文房具店に行こうと
ココロを決めるッ。
ガラガラと
書類の入った
重い箱を積んだ台車を
押して
バスルームに
運び入れる。
黒い洗面所から
一転して
濃いブルーのバスルーム。
天井や壁には
教会の宗教画のような絵が
ペイントされていて。
…落ち着かないッ。
「蛇口も金だしッ。
バスタブにも金の縁取りッ」
…代々、開業医で
お坊ちゃま育ちの
ハズなのに
あまりの成金趣味ぶりに
ここまで来ると
もう何も言えなくなるから
不思議だ。
「私、先生とは
間違っても
いっしょに暮らせないッ」
恋人と結婚相手に求める
条件は違うって
よくおね〜さん雑誌に
書いてあるけれど。
確かに
生活習慣や趣味って
たまに逢うくらいなら
相手に合わせられるかも
しれないけど
毎日だと
やっぱり大変だと思う。