「このマンションは
1階の正面玄関は
しっかりしとるが
地下駐車場から
出入りされてしまったら
気がつかないからの」
住人達の
プライバシーを守る為に
登録していナンバーの
車がマンションに
入ってくると
監視カメラが自動的に
切られるシステムで。
住人のほとんどが
地下駐車場から
出入りするらしかった。
…ど〜りで
正面玄関で
住人を待っていても
誰も現れないハズだ。
「あの書類が
万が一
誰かに持ち出されたら
ややこしい話になる…」
おじいちゃんは
そう言ったけど。
「あの書類が
あの部屋にあるコトは
誰も知らないんだし…」
「さっきのコソ泥夫婦が
今頃、ケータイで
教えているかもしれんぞ」
え。
「ワシが
あの夫婦の立場なら
陽のあたるトコロでは
あのメギツネを
やり込めない、と
わかった今
今度は一族の間を
モメさせるという形で
仕返しをするがの」
って。
あはははは。
「…まさか。そんなコト」
「そうかの?
タカヒロも
ヤバいと思ったからこそ
デラックスな
ハイヤーなんぞに送らせて
友好関係を保とうと
しとるんじゃろ」
「……」
エレベーターの扉が開くと
「うおッ!?」
私は思わず駆け出していて。
「そこまで急ぐ必要も
なかろうにッ」
おじいちゃんが
短い足で必死についてくるッ。