…驚いた。
まさか中にいたのが
テツオさんだなんて
思ってもみなかった。
「だけど
どうしてテツオさんが
こんな書類を
持ち出そうなんて…」
「書類?」
「玄関に出してあった
箱のコトですッ!!」
「ああ。書類だったんだ」
…書類だったんだ、って。
「バスルームにあったんで
邪魔だったから
そこに出しといたんだけど」
え…。
「お前さん
タカヒロのマンションで
シャワーなんぞを
浴びに来とるのかッ」
「や〜だ!
大先生ってばッ」
テツオさんが
おじいちゃんの肩に
なれなれしく触ると
「…ああ。
日本男児が情けないッ」
おじいちゃんが
背中を丸めて
部屋の中に
入っていこうとする。
チャッ。
手錠が音を立てて
私にもついて来いと
無言の命令をして。
「やだ。何?
どうして
手錠で繋がれてるの?」
テツオさんが
好奇心丸出しで
私に問い掛けてきた。
「テツオさんこそ
どうして…」
確か
ゲイバーで知り合ったヒトに
呼び出されて
出かけたんじゃ…。
「ふふふ♪」
…何でしょう。
この意味深な笑いッ。
私は深く追求しては
イケない、と
本能的に思ったのにッ。
「浣腸の箱ッ!
出しっ放しになっとるぞッ」
…おじいちゃんッ。
見て見ぬフリを
してくださいッ。