「どこに行くんじゃッ!」

「決まってますッ!
病院ですッ」


「部屋はどうするッ!
留守にはできんぞッ」


私は
テツオさんの顔を見たッ。


「アタシはダメよお。
今からデートだもんッ」


「……」

あああああ。

この手錠が恨めしいッ。


「留守番が必要なら
誰かをここに呼べば
いいんでないかい?」


おじいちゃんが
懐から自分のケータイを
取り出した。


「おじいちゃんッ」


今日、初めて
おじいちゃんといっしょで
よかった、と

ココロの底から思いますッ!


「あ〜、もしもしッ。

ワシじゃが

悪いが
タカヒロの部屋に来て
しばらく
留守番をして貰えんか?」


ふたつ返事で
色よい返事を貰ったぞ、と

おじいちゃんとふたり
先生の部屋を出る。


電話ひとつで駆けつけてくる
ヒトがいるなんて

やっぱり
セレブは違うんだなあ、って

エレベーターが
上がってくるのを
待っていると

「大先生!

急な呼び出しは
勘弁してくださいな」

聞き覚えのある声に
話し掛けられた。


「今、中にテツオがおるから
後は留守番を引き継いでくれ」

って、おいッ!!!!


留守番を頼んだ相手、って

大正ロマンじゃ
ないですかああああああ!


「おじいちゃんッ!」

書類のコト
忘れてはいませんかッッ!!


「あ、やっぱり出掛けるの
やめにしましたからッ」

どうぞ
お引き取りください、と

私はひきつった笑顔を
大正ロマンに見せながら


「おいッ、何をするのじゃッ」

おじいちゃんを
引きずるようにして

部屋に戻るッ。