コートが
あまり汚れなかったのは
不幸中の幸いで。

セーターのそで口と
スカートの一部なら
じきに乾くだろう。


コートを椅子に掛けて

くんくん、と
自分の袖口と
スカートの臭いを
嗅いでみた。


「…大丈夫だ」

洗剤のニオイしかしない。


安心して
穿いているスカートのお湯を
しっかり絞り上げた。


「毛糸のパンツが
丸見えだけど」

「!!!!?」


背後から聴こえてきた
セイの声に

思わずスカートを
引き下げるッ!!!


「おじいちゃんは
どうしたのッ!?」


「どうしたの、って

シャワーを浴びるのに
介助がいるような
年寄りには見えないが」


…それは
そうなんだけどッ。


あのおじいちゃんの
コトだから

セイに甘えて


「…シャワーの使い方が
わからないとか

適当なコトを言って
セイといっしょに
シャワー
浴びてそうだもんッ」


「…俺がいっしょに
シャワーを浴びてたら

トーコはどうしてた?」


「…別にッ」


「トーコは心配とか
してくれないんだ?」


「……」

セイのその静かな声が
胸にちくん、と
突き刺さった。


なのに。