「ギブッ!
ギブッ!!!!」

これ以上
セイに力を入れさせたら

きっとセイは

さらに
カラダを痛めてしまう、って
わかっていたから


「セイッ、ごめんッ!

ホントに私が
悪かったからッ!!!」


私が簡単に
白旗を掲げると


「悪かっただなんて
思ってもいないクセに!」


セイが私の髪の毛を
乱暴に掴んで


私の顔を自分の顔の正面に
近づけると

私をグッと睨みつけた。


「……」

セイの長いまつ毛に縁どられた
深い色の瞳の中に

私の姿が
ちいさく映り込んでいる。


「…冗談でも

心配してない、なんて
言わないでくれ」


他のオトコにキスされて

平気な顔なんてして
くれるなよ、って

私の髪を掴んでいる
セイの手が

微かに震えていた。


「…あんなのッ」

リコーダー扱い
されてただけもん。


そう答えたかったのに。


セイの視線を
私の口元に感じて

ドキドキしてしまう
自分がいて

情けないけど
コトバが出ない。


だけど。
こんなときに限って


ピンポーン。


無粋な訪問者。