お前は黙って見てろ、って
まるで犬でも
追い払うように
セイは私を邪険にしてッ。
…さっき私を求めてきた
同じオトコとは
とてもじゃないけど
思えませんッッ!!!
セイはドアストッパーを
掛けたまま
玄関ドアを少し開けて
「…着替え
こっちによこして
もう少し
そこで待ってて」
その長い腕を
隙間から差し出した。
「ふんどしがないぞッ」
シャワーを浴び終えた
おじいちゃんが
真っ裸でバスルームから
出てきて。
私はおじいちゃんの思惑に
乗せられないよう
毅然とした態度で
スルーする。
「袴なんだから
下着は必要ないだろう」
セイが玄関を閉めながら
受け取った紋付き袴を
おじいちゃんに
押しつけて。
「では
ふたりに着せつけて
貰おうかのう♪」
おじいちゃんがまた
よからぬコトを
期待していたッ。
だけど。
「ジイチャンのコト
奥さんが
探してるらしいけど」
なんて。
セイのひと言に
「おタマさんが
ワシをッ!?」
おじいちゃんが
いたく動揺し始めてッ。
どうやら
おじいちゃんは
かなりの恐妻家らしく
袴の片方に
2本の足を突っこむ
慌てようでッ。
…セイはどこで
そんな情報を仕入れたのか。