だけど

この沈黙に
我慢できなかったのは

私ではなくセイの方で。


「…あのジイチャン。
車の中でさ。

やたらと
俺やトーコのコトを
訊いてくるモンだから」


逆に質問攻めに
してやったんだよ、って。


セイが
時間切れだと言いたげに

私にコトバを投げつけて

部屋の奥に戻って行く。


「病院へは戻らないの!?」

「…戻って欲しいのか?」


「……」

…セイの怪我のコトを
考えたら

そりゃあ
戻った方がいいワケで。


だけど…。

本音は
先生の元へなんて

帰したくない。


「…また、黙るんだな」

セイが
息を静かに吐き出すように

呟いたから。


「!!」


私はそんなセイの背中に

思わず
しがみついていて。


「…何、だよ」

「……」

「何か言えよ」

「……」

「……」

「……」


「…しがみつかれてると
痛いんだけど」

「ごめ…ッ!」


やるコト為すコト
何てオマヌケな私ッ!


セイの訴えに

反射的に
カラダを離そうとして


「!!」

…反対に、正面から
抱きしめられてしまう。