よく手入れされている
美しいその爪が

固く閉ざされた私の唇の上を

滑っていくと


「アイシテル」


なんて

その形のよい唇がが
魔法の呪文とともに


私の心臓は
完全に
はじけてしまっていて。


…先生のベッド。


このスプリングの
跳ね返りも

天井の景色も


初めて
セイと結ばれたときと

同じだ、なんて。


あのときと変わらない

セイ肌の
シルクのような
極上な手触りに

我を忘れそうになる。


「トーコ、かわいい」

私が伸ばした腕を

セイが小鳥みたいに
ついばんで

あっちでコチョコチョ
こっちでコチョコチョ。


イタズラするみたいに


セイの唇が大活躍して。


「…くすぐったい」


チュッ、チュッ、チュ。

くすくすくす。


セイがわざと音を立てて
私のカラダで遊んでいて


「もおおおおッ♪」

何だか
頬が緩んでしまう。


「…やっと笑ったな」


セイに指摘され


その瞬間。

自分のホッペが
イッキに
真っ赤になったのが

自分でもわかりますッ。


恥じらいながら見上げた

セイの目が
やさしくて。


「…しあわせだ」


とってもしあわせ…。


それは

セイが発した
コトバだったのか

それとも

私の声だったのか。


ふたり
想いは同じだった。


…もう絶対に離さない。

離れない。