「ぎゅうううううむッ!」
私は気恥ずかしさを
誤魔化すように
声を上げて
セイの両腕を締め上げるッ。
「痛い、痛い」
と言いながらも
セイのその顔は
とっても嬉しそうで。
…楽しいッ。
何だか
すっごく楽しいぞッ!
今日は本当に
最悪な運勢だとばかり
思っていたけれど
9回裏2アウトから
最後に
こんな逆転満塁ホームランッ!
もう
気分は最高潮!
だった。
のにッ!!!!!
ガチャッ!
ガチャチャッ。
「!?」
玄関の方から
おおきな物音がして。
「…誰かが
先生の名前を呼んでいる?」
思わずふたり
予期せぬ訪問者に
ベッドの上で固まった。
「すみませ〜ん!
中にどなたか
いらっしゃるんです
よね〜!?」
「……」
「……」
ドンドンドン、ドンッ!
ピンポンピンポン、ピンポン!
オトコのヒトの声
みたいだけれど
「誰なのかな…」
ドアを激しく叩きながら
玄関チャイムを
連打し続けていて。
…只事ではないッ。