スプリング♂039


「まったく、もお!
朝から人騒がせなんだから〜」

と言いつつも

テツオさんの機嫌が
とてもいいのは

昨夜のデートが
上手くいったから、らしく

今日はどこか
お肌もツヤツヤしているッ。


私が電話を掛けたとき

テツオさんは
新しい彼を駅まで
車で送り届けた直後で。

「まあ、帰り道だったから〜」

私の話をロクに聴きもせず

テツオさんはふたつ返事で
ほんの数分でやってきた。


「こんなコトなら
もっと気合い入れて
お化粧してくるんだった〜」

カメラの激しいフラッシュを
浴びながら

テツオさんの運転する
真っ赤なスポーツカーで

私はマンションの中に
入るコトに成功する。

駐車場の前も
あれだけ
たくさんのマスコミが
張っているってコトは

恐らく
大正ロマンはまだ
このマンションの中に
いるんだろう。


「あ〜、ホントだ。
失踪したんじゃないか、って
ウワサされてるう」

9階に向かう
エレベーターの中

ケータイで
ネットサーフィンしながら
テツオさんってば
他人事みたいに笑っててッ。


「占い師が突然
サイトを閉鎖したくらいで
あれだけのマスコミが
集まるとは思えないし」


きっと
国税局のガサ入れでも
あるんじゃない?、って

さらりと
言っていますけどッ。


「…国税局のガサ入れって

事前にマスコミに
知らされたりするモノ
なんですか?」


「そんなの、知らないわよ〜」

アタシに
訊かないでよ〜、ってッ!


国税局、なんて話を
持ち出したのは

テツオさん、アナタですッ。


…彼氏と上手くいってるから
浮かれているのだろうかッ。