「…だって」
人間の腕って
こんなにも重かったんだ、って
わかるくらい
私が支えているセイの腕が
石のように硬くなっている。
「私が来なかったら
セイは、セイは…!」
「バカだなあ。
お前が来なくても
時間になったら
ここのお手伝いなり
スタッフが来るから
平気だったのに、さ」
「そんなヒト達がッ
助けてくれるワケ
ないじゃないッ」
「ボスの姿が見えないんだ。
助けてくれなくても
警察か管理人くらいは
呼ぶだろう」
大正ロマンは
ただ単に
セイや先生に
恥をかかせたかっただけ
だろう、と
セイが静かに苦笑した。
「セイくん…!」
手におおきな工具を持った
テツオさんと
手首に手錠の半分を
ぶら下げた先生が
部屋に飛び込んできて。
セイの手錠の鎖を
工具で切って
3人がかりで
セイを壁から下ろした。
先生がセイの腕の重さが
負傷した肩の
重荷にならないよう
自分の着ていたシャツで
固定する。
「…どうして
こんなコトに…!」
私の問いに
「…僕が悪いんだ」
先生がすかさず
反省の弁を述べる。
「そう!
先生が悪いんだ!」
セイが間髪いれずに
先生を責めた。
「今日の占いイベントで
あの占いオバサンにさ
結婚、引退宣言の花道を
作ってあげようとしたのにさ」
先生ってば
全部
ぶち壊してくれちゃって
って
セイが冷ややかな目で
先生を見る。
「世間に対して
先生と占いオバサンが
婚約したって芝居を
してくれれば
それで
あの占いオバサンの
面目も立ったのにさ」