本当は
”そんなコト僕には出来ない”
”アナタの大切なHPだ”
…大正ロマンは
先生が
そう躊躇してくれるコトを
期待していたに
違いなかった。
なのに。
先生は何の躊躇もなく
HPを言われるままに
削除して。
彼女の一世一代の大勝負。
おおきな賭けだったのに。
それは
あまりにもあっけなく
簡単に成されてしまって。
「…タカヒロは
オンナゴコロがわからないから
だから
オトコの方が好きなのよね〜」
テツオさんが
呆れながら笑ってるけど。
「あのオバサン。
先生のコトが
マジで…好きなんだよ」
自分が好きになってしまった
オトコが
オンナを愛せない人間なら
せめて
一番近くにいるオンナで
いたい、って
哀しいオンナゴコロ。
わかんないかな〜、って
少年のセイにまで言われて。
「…だったら
どうして、あのヒトは
僕にやたらと
見合いを勧めていたんだ?」
先生はまだ
納得がいかないとばかりに
反論した。
「見合いの話を…口実に
先生に…堂々と
近づけるから、に
決まってる、じゃん」
「……」
先生はセイに
そこまで言われて
初めて
大正ロマンの乙女ゴコロに
理解したようで。
「…それならそうと
先に言っててくれたら…!」
「…俺も先生が
そこまで鈍い人間だとは
思ってなかったから…ね」
自分の作戦の甘さを
反省しながら
セイの青白い額からは
汗がどんどん
噴き出していて。
「セイッ!
もう
しゃべんなくていいからッ」
私はセイの汗を
ハンカチで拭く。