…このヒトを
できるだけ刺激しないで
部屋の中に引き入れるには
どうすれば
いいんだろう。
やだな。
緊張感に
心臓がバクバク言ってて。
「…タバコ。
部屋の中にも
買い置きとかないんですか?」
私は、この空気が
動き出さないように
慎重にコトバを選んだ。
のにッッッ!!!!!
「トーコちゃん
大変よッ!!!!!」
その場の空気を
おおきく揺るがす
その甲高い
ハスキーヴォイスッ。
「トーコちゃん、どこッ」
キッチンから
テツオさんが
私の名を連呼するッ。
「トーコちゃんッ」
バンッ!、と
おおきな音を立て
キッチンとベランダを結ぶ
ドアが開いて
「…痛いッ」
私はオデコを猛打して
その場に座り込んだ。
「ああ!、トーコちゃん
そんなトコロにいたのッ」
私のカラダに邪魔されて
半開きになっていた
ドアから
テツオさんが
こっちを覗き込んでくる。
「今
タカヒロから電話が…」
そこまで口にして
テツオさんは
ようやくそこに
大正ロマン
そのヒトの姿があるコトに
気がついた。
「…タカヒロさんてば
このおバカさんではなく
アナタにS.O.S.を
発信するなんて」
大正ロマンがまた
おおきな声で笑ってみせる。
「ほら、この子にも
教えてあげなさいよ。
今、自分達がどういう状況に
なっているか!」
え?
大正ロマンの
意味深なセリフに
私はテツオさんの顔を見た。