私のカラダが

ベランダの取っ手を
軸にして

ぐるり

前回りをするように

ベランダの柵を
簡単に越えてッ!!!!


テツオさんの顔。

大正ロマンの背中。

青い空。

隣りのビル。


目の前の風景が
私の中で

ゆっくりと
コマ送りになった。


「私、落ちちゃうんだ」


そう自覚した私の足を

「トーコちゃんッッ!!」

誰かが掴んでて


私はそっと目を開ける。


「テツオ、さん…?」


「動かないで
トーコちゃんッ」



引っ張りあげるから、って

私の視界に
自分の毛糸のパンツが
入ってきたッ。


ひええええええッ。

逆さ吊りとゆ〜

これ以上ないくらい
恥ずかしい恰好でッ。


私は
思わずスカートを
ヒザまで上げたッ。


「…トーコッ。
お前はこの非常事態に
何をやっているんだ」

え。


「釣られたマグロみたいに
なってないで

引き上げようとしている
テッちゃんに

少しは協力しろ」


って。


ベランダの柵を
跨ぐようにして

私の
スカートのベルト芯を掴む
そのヒトは…!