スプリング♂041


「トーコさんッ!
これに掴まりなさいッ!」

飛び降りる覚悟を決めた
私のカラダに
正絹の帯が触れた。


…大正ロマン!?
自分の帯を解いて…!?


「アンタッ!
そんな助けるフリして

手が滑った、って
事故死に見せ掛けるつもり
でしょッ」

…テツオさんッ。
何て恐ろしい発想をッッ。

「トーコちゃんッ!
アタシが帯を支えるからッ!
安心して登ってきてッ!」

テツオさんの声に
正絹の帯を掴んだ瞬間ッ。

シュルルルルッ!

手の中から帯が滑るように
逃げてゆくッッ!!!!


「トーコちゃんッッッ」

正絹の帯は私の手を離れて
地上へと落ちて!!!!

「……」

私はセイに
腰を掴まれたまま

宙ぶらりんの状態で。


「何をやってるのよッ!

帯の裏を使うコトも
知らないのッ」

テツオさんを怒鳴りつける
大正ロマンの甲高い声が
アタマの上から聴こえてきた。

ぶ〜ら、ぶら。

私は壁に足を延ばして
カラダの揺れを
必死で止めるッ。


「アタシッ、管理人室に
電話してくるッ」

テツオさんが
レスキューを呼びにいったけど

到着するまで
いったいどれくらい
時間が掛るのか。


セイの腕からは
精気が消えて
真っ白になっていて。


…やっぱりもう

飛び降りるしかないッ!!!

私は再びスカートのホックに
手を掛けたッ。


ぐッ!

その瞬間。

私のスカートのベルト芯を
掴んでいたセイの手に
力が入って。


「…間違っても
飛び降りようとか思うなよ」

セイの低い声が響く。