「だけどッ!」
「着地し損なったら
お前のその恥ずかしい
汚れた毛糸のパンツが
万人の目に晒されて
恥をかきながら
病院に連れていかれるぞ」
「……」
「即死の場合なんか
警察に現場写真を
何枚も撮られて、永久保存だ」
なんてッ。
「昨夜、風呂にも
入ってないんだろ?
不潔少女として
レッテルを貼られたまま
お前は死んでいくのか…」
「この期に及んで
そんなコトッ」
さっきまで
あまりの痛みに気を
失いそうになっていたクセに
意地悪を言う余裕は
あったんですねッ。
「失敗なんかしないから!」
スカートを
掴んでいるセイの手に
私の手を重ねると
「…トーコ。
俺のカラダを伝って
上に這い上がれ!」
「え?」
「飛び降りるよりも
はるかに確実で安全だ」
「そんなコトをしたら
アナタの肩が!」
セイの提案に間髪入れず
大正ロマンの声が
私のアタマの上から
降ってきて
イッキに不安が膨らんだ。
「壁を蹴って、反動をつけて
…できるな?」
セイの声のトーンは
冷静だけど
「だって、セイの肩がッ!」
「大丈夫。
この手は絶対に離さない」
言ってる傍から
ボタボタ、と
セイの汗が落ちてきて。
「…何か
コイツの命綱代わりに
なりそうなモノを
探してきてくれる…?」
…痛むクセに。
気を失った方が楽なクセに。
「わかったわ!」
探してくる、なんて
大正ロマンも
セイの提案なんか
受け入れてないで
もっと他の方法を考えてよ。
「…やだッ。
何で静かになるのッ」