「勝手にどこかに
いなくなるんじゃない!」
振り向いた私の
首根っこを引っ張って
セイが私を部屋の中に
連れ込もうとするけれどッ。
「今なら
まだ取り返せるかも
しれないからッ」
「書類のコトなら
気にしなくていい」
えッ。
「どうせ
車のトランクの中にでも
隠してきたんだろ?」
そう振り返ったセイの
視線の先には
大正ロマンが立っていてッ。
「先生の車のキーが
ひとつなくなってるからね」
「……」
セイの指摘に
大正ロマンの眉が
ぴくり、と動いた。
「こんな風に強引に
取り返さないと
いけないなんてさ。
余程ヤバイ書類だったと
見える」
「…アナタ。
少しは口を慎んだ方が
いいわね」
口は災いのモト。
「悪い言霊が
アナタを不幸にしているわ」
大正ロマンが
高圧的なモノ言いをしてッ。
「…俺に骨折させた本人が
よく言うよな」
セイが負けじ、と言い返すと
「骨折、って…」
大正ロマンの視線が
上半身ハダカのセイの
バストバンドに注がれた。
…骨折、じゃなく
ヒビガ入っただけだって
先生は言ってましたけどッ。
この際
そ〜ゆ〜ツッコミは
スルーしますッ。
「…いくら欲しいの?」
なんてッ
ヒトを
ゆすり、たかり扱いする
大正ロマンも
大正ロマンだけれどッ
「それは
箱の中身に関する口止め料?
それとも
怪我に対する慰謝料?」
セイもそんな大正ロマンを
明らかに挑発していてッ。
ブウィ〜ン、ブウィ〜ン。
カーペットクリーニングの
オジサンの手も
止まっていますッ。