スプリング♂032
「だッ、大丈夫ですか…ッ」
大正ロマンの手の甲に
縦に1本赤い筋が入って
そこから赤い血が再び
ドロドロと溢れ出してきた。
まさか
セイがシャンパングラスを
叩きつけようとした
テーブルの端に
大正ロマンが
手を伸ばしてくるなんて…!
「…コレステロールの
高そうな血だな」
なんてッ。
セイってば
自分が加害者に
なってしまったという
自覚があるのだろうかッ。
私に睨まれて
「…言っておくが
このオンナが
自分で手を
出してきたんだからな!」
セイがキツイ目をして
この期に及んで責任転嫁ッ。
大正ロマンが
セイにさせた怪我だって
この理屈で言えば
飛び出してきたセイが悪い
というコトになりますがッ。
「……」
私の無言のツッコミに
「お前こそッ
運動神経のよさだけが
取り柄のクセにッ
すぐ傍にいて
どうして阻止しなかったッ」
「……」
セイッ、アナタは
こんなときだけ
私の能力を手放しで
評価するんですねッ。
「…そ〜ゆ〜セイこそ
振り下ろした手を
どうして途中で
止められなかったのかなッ」
「高性能なF−1カーが
全速力で走っていて
コース上に飛び出してきた
動物を避け切れると
思うかッ!?」
…ここでもアナタは
あくまでも自分を
”高性能”な
最高峰レーシングカーに
例えるんですねッ。
「だいたいッ
いつもいつも俺に
寸止め、お預けを
食らわせるのは
お前の得意技だろうがッ」
「なッ何の話かなッッ」
セイの下ネタに
顔から
火が噴き出しそうになるッ。