「そうか!
そんなに自分の痴態を
皆さんに披露したいか…!」
「ああああああああ〜ッ」
私はおおきな声を出して
セイの傍若無人な口を
押さえつけたッ。
「…あのう」
「!?」
「そこもガラスの破片が
飛んでるかと思うので」
ヒートアップする私の横で
ハウスクリーニングの
オジサン達が
ガラスの破片を集めていて。
ダイヤを全部
見つけてからじゃないと
掃除機で
吸い込めないから、と
床に這いつくばって
いるけれど。
…そこに
大正ロマンの姿はなく。
「あれ…?」
「奥さまなら
出て行かれましたけど」
キョロつく私に
ハウスクリーニングの
オジサンが教えてくれた。
「自分の部屋に
絆創膏でも
取りにいったんだろ。
放っておけばいい」
…セイはそう言うけれど。
カーペットは
悲惨な状況なのに
先生のお母さまの形見の
テーブルには
血の跡ひとつなく。
シャンパングラスを
守ろうとしたのなら
手の甲でなく
掌を怪我してたハズで。
…やっぱり
このテーブルを
守ろうとしたんだよね。
先生は
自分の父親の愛人みたく
大正ロマンのコトを
思ってるみたいだけれど
本当に
先生のお父さまの愛人なら
亡くなった先妻の
形見なんか
身を呈して
守ったりはしないだろう。
大好きなヒトの
母親の形見だから…。
「…やっぱり
怪我が心配だから
救急箱持って
様子を見にいってくるッ」
私はそう宣言して
立ちあがった。