「……」
オトナの女性の
秘めた想い。
「お前のヒザに
絆創膏が貼ってあるコトなら
先生に訊いてたから」
「え」
「それに
それだけおおきな絆創膏
フツー誰でも気づくっしょ」
…あ。
「…あは」
あはははッ。
そっちの話、ねッ。
早合点して
口にしたりしなくて
よかったあ〜。
「…何、笑ってるんだよ」
「えッ、いや、そのッ」
「先生に治療して貰って
そんなによかったか?」
…セイ?
「ふたりっきりで
やさしくして貰って
楽しかったか?」
…別にやましいコトなど
なかったけれど
セイのその目が
あまりにも真っすぐで
恐かったから…。
「……」
気がつくと私は
セイの目から
視線を外してしまっていた。
セイのバストバンドに
血がついていて。
「…汚れちゃってる」
細くてシャープな
その血痕を
私が指で示すと
「……」
セイは私に背中を向ける。
嫌だッ!
「またケンカなんて
絶対に嫌だからッ!!!」
必死でセイの腕を掴んだ。
「…わかってるよ」
そう言いつつも
その表情を
見せようとしないのは
何故なのか。
セイは私の指を
その長い指で
1本、1本外してゆくと
「着替えてくる」
寝室へと消えて行って。
…私はひとり
その場に取り残される。