はあああああ。
トボトボと
先生のお母さまの
形見のテーブルがある
ソファーに戻ると
そこは
さっきの騒ぎがウソのように
キレイに片づけれれていて。
「…まさに職人仕事ッ」
ハウスクリーニングの
皆さんが仕事を終えて
引き上げようとしていた。
「お世話になりました」
私は玄関で
彼らを見送って
カギを閉める。
「今度はちゃんと
ドアストッパーを
掛けるのを忘れなかったな」
シャツをラフに
着こなしたセイが
私の後ろに立っていた。
「ドアストッパー。
掛けるの忘れてたの
あのときだけだったしッ」
会話を繋げたくて
一生懸命、言い訳する。
「部屋を留守にして
買い物に行ってしまうヤツが
よく言うよ」
セイが
呆れた顔で私の頬を
引っ張るけれど。
「お〜お、そうか、そうか。
俺に甚振られて
そんなに嬉しいかッ」
悔しいけど
嬉しいですッ。
「ん〜ッ♪」
セイが私の頬を
両手で潰したまま
楽しそうに
キスをして。
チュッチュッ、と
ちいさなキスを繰り返す
セイの行為を阻むように
セイのケータイ電話が
鳴り出した。
「セイ、ケータイ」
「ヒトの恋路を邪魔する
無粋な奴なんて
馬にでも蹴られて寝てろ」
セイは
無視を決め込む様子
だったのだけど
セイのケータイが鳴りやむと
今度は私のケータイが
鳴り出して。
「…ママからじゃない?」
セイのウソを真に受けて
私が体調を崩したって
思い込んでいるから
「心配して掛けてきたんじゃ
ないのかな…」
「……」
セイは私のポケットから
鳴りやまぬケータイを
引き出して
相手を確認する。