スプリング♂033
テーブルの上に残されていた
クラッカーを
ひとつ、ふたつ摘まみながら
冷めてしまったチーズを
トースターで温め直そうと
キッチンに立つ
セイの後ろ姿を
チラチラ、と
私は何度も盗み見る。
「…あのさ〜」
ふいに
セイに話しかけられ
「なッ
何でしょうかッッ!?」
自分の盗み見が
バレたのか、と
私は思わず
取り乱してしまったッ。
「これ食べたら
タクシーで帰ろうな」
「えッ」
「もうこの部屋にいる
必要はなくなったし
お前も明日
学校があるだろう?」
「……」
…確かに
そうなんだけど。
いつも
何かと理由をつけて
私に学校を休ませてきた
あのセイがッ
私の登校を
気遣ったりしてるコト自体
とっても気味が悪くって…。
「…あの書類
取り戻さなくてもいいの?」
「いいの」
「どうしてッ!?」
なんか変だ。
絶対に
持ち去られるな、って
あれ程、私に
警戒させていたクセに。
こうも簡単に
手を引こうとするなんて。
チン!
「……」
セイは返事するのを
保留したまま
焼きあがったチーズを
トースターから取り出して。
今度は
ちゃんと鍋敷きを持って
こっちにやってくる。