セイは
私の斜め向かいに腰掛けると
無意識に
テーブルの傷を撫でていた
私の手を掴んで引き寄せてッ。
「なッ、何ッ!?」
何をされるのか、と
…ちょっと、焦ったッ。
「さっき、熱がってたけど
ちゃんと充分に
冷やせてたのか?」
「あ…」
ヤケドね、ヤケドッ。
「大丈夫!
全然、痛くないしッ」
私の手を気遣うセイに
何故だか
胸を撫で下ろす自分がいて。
「…軽く
ヤケドの痕が残ってる」
私の掌にタバコの火の
軽いヤケドの痕を
セイが目ざとく見つける。
「それはッ!
前にヤケドしたトコロでッ」
「…ふ〜ん」
「……」
けっして
大正ロマンを庇うつもりは
なかったけれど。
…大正ロマンに
灰皿にされた、なんて
正直に言って
セイを加害者にするワケには
いかなかった。
「…トーコの手。
傷痕だらけだな」
「……」
…そんな風に
改めて指摘されると
ちょっと辛い、な。
ねずみ〜らんどで
大怪我をして
完治して以来
自分の掌なんて
まともに
見たコトもなかったし。
「トーコの生命線は
ゴキブリ並みに立派だな」
「…ゴキブリに
生命線なんか、あるのかなッ」
「知能線も
こんなに細切れで…」
なんてッ。
セイってば
ふざけてみせてッ。
「うるさいなあ、もおッ」
私は
自分の手をグーにして
セイの手から
自由になろうとした。
のに…。