「トーコの手。俺、大好き」
「……」
私のニャンコ手に
セイは
やさしくキスをして。
「チーズより
こっちの方が美味そうだ」
「ひと言多いッ!」
無邪気に笑う
セイの口の中に
私は
クラッカーを押し込んだッ。
…確かに
節のない
まるっこい手では
ありますがッ。
「チーズをつけて
食べる為に用意したのに」
クラッカーがいつの間にか
もう半分に
なっちゃってるぞ、と
セイが私の食い意地を
あげつらいながら
とろ〜り、と伸びる
チーズを
クラッカーですくい取る。
サクッ。
セイの口の中で
クラッカーのいい音がして。
「やっぱり
メイプルを掛けて正解」
お前も食べろ、と
珍しくセイが自分の好物を
私に勧めてきた。
「…今日のセイは
やさしいんだか
意地悪なんだか
わかんない」
「俺はいつもやさしいだろ」
…自覚がないトコロが
とっても
セイらしいですッ。
私がクラッカーで
チーズをすくって
自分の口に
遠慮なく運ぶと
私の口から伸びていた
チーズを
セイの長いイタズラな指が
捉まえる。
びよ〜ん、と
私の口から
オマヌケに伸びたチーズが
セイの口へと運ばれて。
「……」
チーズで
ふたりの口で、繋がった。
「どっちが早く食べるか
競争ッ!!」