「でもッ!
そ〜ゆ〜セイだって
拉致られてる私を
ニコニコ笑って
見送ってたしッ」
「少しは
不安にさせておかないと
お前は
助けて貰えるから、と
安心しきっちゃうだろう?」
ってッ!
私の性格と行動パターンを
知り尽くしているセイに
反論すればするだけ
切なくなるッ。
「……」
「理解できたのなら
さっさとチーズを食べて
帰るぞ」
「……」
私が無言で
チーズとつけた
クラッカーを口に運ぶと
セイは
ケータイを取り出して
ママに電話を始めて。
「ウチの研究室に
慰労に来て
気分悪くなってたトーコ。
今から連れて帰るから」
セイが
私にも聴かせるように
”設定”を口にする。
だけど。
「うん、うん、へ〜。
そ〜なんだ。
へ〜、よかったね」
前回のママとの電話は
上手に切り上げていた
セイだったけど
「あ〜。そうなんだ、うん」
今度ばかりは
そうは
いかなかったようで。