スプリング♂035
「先生さあ。
あの占いオバサンに
プロポーズする気ない?」
セイの衝撃的なそのひと言に
注射器を処理していた
先生の手が
一瞬、止まるッ。
「…セイくん?」
「…はいはい!
ないよね!
わかってます!」
セイはあっけなく
自分の発言を取り消すと
ゆっくりと
ベッドから身を起こした。
「……」
セイの背中の一部が
遠目にも
少しへこんでいるのが
わかる。
…変だけど。
青黒く変色した
怪我の部分が
元々の肌の美しさを
より一層、強調していて。
「ごくんッ」
…今、息を飲んだのは
私だったのか。
それとも
「…趣味の悪いジョークだ」
美しいセイの肢体を
直視できずに
おどおど、と
視線を外してしまっている
先生だったのか…。
「ふふん」
そんな先生を甚振るように
セイが
先生の腕に触れながら
「これ」
自分のバストバンドを
妖しい目をして手渡した。
「あ、…ああ」
さっきまで
医者モードだったハズの
先生のアタマの中は
この空気に
今や、もう
セイという美神に跪く
ただの信奉者に
成り下がってしまっている…。