そんな急な来訪者にも


「…何か用ですか?」


先生は大正ロマンに
営業スマイルを向けて

オトナの対応を
してますけどッ。


背中から
疑心暗鬼のオーラが

これでもか、と
立ち昇っているのを

ひしひし、と感じますッ。


「いえ。あの…」

言い訳しようと
コトバに詰まる
大正ロマンを

「車のキーを
返しにきたんでしょ?」

何故だかセイが
フォローしてッ!!!

「車のキー?」

先生の顔から

笑顔が消えるッ。


「さっき、このオバサンが
おおきい車を借りに来たから

俺がキーを
渡してやったんだけど」

ってッ。


セイが嘘八百を並べ立て

大正ロマンに
カギを返すよう

その掌を差し出して
促した。


…セイの言う通り

大正ロマンは
カギをそっと
戻しにきたのだろう。


車のキーは

白いレースのハンカチが
巻かれていた
大正ロマンの右の手の中に

しっかりと握られていて。


「……」

「…先生に
自分で直接返したい?」

セイが
当惑している大正ロマンを
からかおうと
するモノだからッ

「カギ
お預かりしますねッ」


私はその場の空気を読んで

とっさに
私は大正ロマンに
助け船を出したつもりだった。

つもりだった

のにッッ!!!!!!


「…毛糸のパンツッ」

「え?」


「タカヒロさんが
手にしている
毛糸のパンツは

もしかして
アナタのかしらッ!!!」