大正ロマンを挑発して
私を殴らせて

その上

「ケンカをふっ掛けさせる
なんてッ

何、考えてるのよッ!!」


私は
セイのアゴを掴んでッ

その脳が揺れるくらい
激しく前後に
ブンブン振り倒したッ。


「痛い、痛いッ!
傷に響くッ!!!」

セイが私に笑いながら
泣きを入れてきて

ますますムカつくッ!!!

可愛さ余って
憎さ百倍ッ。

今までの憤懣が
いっきに私の感情を
押し上げたッ。


そんな私の戦意に
水を挿すように


「…いいわよ。

殴りたいのなら
私を殴りなさいよ」


なんてッ。

…その声に
恐る恐る振り返ると。


大正ロマンが
ノーガードで
目をつぶっているッ。


「ほら!
相手もそう言ってるんだ!

遠慮なくボコってやれッ!」


「……」

セイが無責任に
煽ってくるけどッ。


…もしかして

大正ロマンの家で
私やセイがやられたコトを

これでチャラに、と
ゆ〜つもりなんだろうか。


だけど。

このヒトに対する
あのときの怒りなんか

もう
とっくに消えていて。


大正ロマンの右の手に
巻かれた
白いレースのハンカチ。


…セイだって
このヒトに
グラスで怪我をさせて
いるんだもん。


「…もういいですから」


私はにっこり笑って
その場を
収めようとした。


のにッ!