スプリング♂036
「明日さあ。
映画のトークショーか何かの
イベントに
あの占いオバサンが
ゲスト出演
するらしいんだけど…」
セイが
首をコキコキ鳴らしながら
足早にリビングに
向かってるッ。
その後を
先生が当たり前のように
追い掛けていってます
けれどッ。
「…あの〜。
私、ひとりで
帰っちゃいますけど〜」
いいんですか〜…。
私が声を掛けても
「あ、トーコちゃん
気をつけて帰るんだよ〜」
…先生の見送りの声だけが
リビングの向こうから
空しく
聴こえてきただけでッ。
「…何を始めたんだろうッ」
…すんごく気になったッ。
「…ちょっと
確認するだけだからッ」
ウチのセイが
また、よからぬコトに
首を突っ込みはしないか。
「…チェックしたら
すぐに帰るんだからねッ」
自分に言い訳しながら
私はリビングを
そっと覗き見るッ。
「先生、またパソコン
新しいの買ったんだ〜」
勝手知ったる、と
言わんばかりに
セイが引き出しの中から
ちいさなノートパソコンを
取り出していて。
「イタリアのデザイナーに
デザインを特注してたら
出来あがるのに
2年も掛ったよ」
「うわ〜、マジ!?
もしかしてOSも
最新のヤツじゃないの〜ッ」
…セイってば
先生とずいぶん
楽しそうじゃ
ありませんかッ。
ソファーのひじ掛けに
長い足を投げ出すようにして
横になりながら
ちいさなパソコンを
天井に向けるようにして
片手で
キーボードを押していてッ。
…その体勢ッ。
傷には
響かないんですかッ。