セイは
パソコンの画面から
目を離そうともせずに

私をそう突き放し


「先生〜
俺、コーヒー
飲みたいんだけど」

当たり前のように
先生をアゴで使っては

「おいしい羊羹があるよ」

先生がさらに
セイ様をつけあがらせるッ。


「ああ、いいね〜」

セイのウェルカムの返事に

先生が
私に視線を向けてきたから


私の言った通り

セイはお茶は苦手だけど
小豆系は好きだ、って
ホントだったでしょ?

って

胸を張ってみせると


「…トーコちゃんも
よかったら、どうぞ」


先生が複雑そうに
苦笑しながら

セイから少し離れた
向かいのソファーを
私に指定した。


「……」

…私ッ

完全に
お邪魔虫扱いされて
いますよねッ。


この居心地の悪さに

もう、セイが何をしようと
企んでいるのかなんて

どうでも
よくなってきてッ。


「…もう帰りますからッ!」

思わず
ココロにもないタンカを
切ってしまっていたッ。


「帰りますッ」


帰るんだからッ。


「ひとりでッ
大丈夫ですからッ」


だけど

クドイくらい
”帰るからね”と
繰り返す私を

セイは
気にも留めようともせず


「うわ〜。

世界一しあわせになる結婚が
テーマって

どんな映画なんだよ〜」


大正ロマンの
明日のイベントの
ネットの検索に

夢中になっているッ。


…ネコの目のように

くるくる、くるくる変わってく
セイの気分ッ。