さっきまで
深刻そうにしていたかと
思えば

いつの間にか
先生とも仲良くやってるしッ。


…こんな複雑怪奇なセイを

おバカな私が
理解しようと
努力するコト自体が

間違っているんでしょうかッ。


「あ〜。タクシー1台
回して貰える?

行先は…」


頼んでもいないのに

先生が私の為に
手回しよく
タクシーを呼んでいてッ。


「タクシーが到着するまで
30分以上は
かかりそうだって…」


…先生ッ。

残念そうに報告するのは
やめてくださいッ。


「ほ〜ら、みろ」

この辺りは
駅にも
タクシー乗り場がないし

空車のタクシーも
この時間は
ほとんど流れてこない、って

セイが気まぐれに
会話に入ってくるッ。


なのにッ。


「トーコちゃんは
飲み物、何にする?」


セイが
私に話し掛けているのを

先生がさりげなく
ぶった切ってきたッ。


「…どうぞお構いなくッ」


そんな先生を牽制しながら

私はセイの持っていた
ノートパソコンを
取り上げるッ。


「私を邪魔にしてッ」


いったい何を
企んでいるんだかッ!?


「…邪魔にしてるつもりは
ないんだけど」


…セイが
静かに私を見上げていて。


長いまつ毛の影が
その深い瞳に落ちていて

…艶めかしい。