「…先生が手を焼いて
困っている
あの占いオバサン」
実際に会うまでは
さっさと先生から
手を引かせるよう
仕向けるのが
「先生にも恩を売れて
自分にとっても得策だ、って
思っていたから」
見合いパーティーの
会場にも
「そのつもりで
乗り込んで
行ったんだけどさ…」
セイは再び目を開けて
自分に背中を向けている
先生に目をやっている。
「…俺さ
自分のコトばっかりで
先生のしあわせなんか
考えたコトも
なかったから…」
「…僕は今のままで
充分しあわせなんだけどな」
先生は
セイの次のコトバを
遮るように答えると
イッキに熱いコーヒーを
喉に流し入れて
2杯めのコーヒーを淹れに
キッチンに立った。
「…このテーブルってさあ。
あの占いオバサンからの
プレゼントか
何かだったの?」
セイが
ゆっくりと身を起して
テーブルの
自分がつけた傷を触ると
「…昔から家にあった
ただの古い家具だけど?」
先生が不審そうに
慎重に答えてみせて。
「ふ〜ん。
あのオバサンが
自分の身を呈してまで
このテーブルを
守ろうとしていたからさ」
てっきり
特別なモノなんだろうって
思ったんだけどな、って
納得がいかないと
言わんばかりに
セイの視線が
先生の背中を追っている。
「…そのテーブル。
けっこう
気に入ってるのに
みんなが
乱暴に扱うモンだからね」
母の形見だと
ウソをついてたんだ、って
先生が言い訳をしてるけど。