スプリング♂037


いつものように
おみそ汁のいい匂いがして
目が覚めた。


目をこすりながら
ダイニングに顔を出すと


「あら、トーコ。

起きてきても
大丈夫なの?」


ママが
私のオデコに手を当てた。


…そうだった。

昨夜、ウチに帰ったとき

パパにいろいろ訊かれるのも
面倒だったし

ママのおしゃべりにつき合う
余裕なんてなかったから。


「昨夜は
帰ってくるなり
疲れた、って

お風呂も入らず
寝ちゃってたけど」

ママが私の顔を
心配そうに覗き込んでくる。


「ご飯は食べれそう?」


「…うん」

まだ半分寝ぼけ気味の
ぼ〜っとしたアタマで

テーブルに着くと

食卓には

セイの天敵
ちりめんじゃこに

コンニャクに
おおきくカットされた根菜。


普段の我が家なら

絶対にお目にかかれない
オカズ達が並んでいた。


「…セイ、やっぱり
まだ帰ってきてないんだ」


「研究室のデータを取るのに
2〜3日帰って来れない、って

セイは言ってなかった?」


「……」


それは

最初に
セイが家を空けたときの
状況が変わる前の設定で。


…最初に家を出たときだって

そもそもセイは
どうして連泊なんて
するつもりだったのか。