「あらあら。
もう飲み干しちゃったんだ?」

「食欲があるのなら安心だ」


パパとママが笑ってて。


「……」

後はセイの
手厳しいツッコミがあれば

いつもの朝の光景なのに。


…まるで

わさびぬきのお寿司。
カラシ抜きのおでん。

トウガラシ抜きの
ペペロンチーノ。


「…いかんッ」

”セイ抜き”の例えが
食べモノでしか浮かばないッ。


朝食を
急いでかっこんで


「ごちそうさま!」


お皿を流し台に運ぶと

調理台に置きっ放しに
なっていたママのケータイの
着信ランプの点滅に
気がついた。


「ママのケータイ
メールが来てるみたいだよ!」


お皿を洗っている私の横で

ママが
ケータイをチェックする。


「パパッ、大変ッ!」

ママが
自分のケータイを
持ったまま

パパの元へと駆け寄って。


「鑑定料を払い込んでいた
占い師のサイトが

突然消えて
無くなっちゃってるん
だって!」

えッ。


私はそこで初めて

事態は
急変していたコトを悟った。


大正ロマンの

「サイトが消えた?」


「…メンテナンス中とかで
一時的に
アクセスできないだけじゃ
ないのか?」

パパが
自分のケータイを
取り出して

大正ロマンのサイトに
アクセスする。


私はそっと
ママの手から
ケータイを拝借した。