「…セイに邪険にされるかも
しれないけれど」


それはそれで

みんなが
無事で何事もない、って
確認できたなら

行った甲斐もある、と
ゆ〜モノで。


マンションに行けば

管理人さんに顔パスで
すんなり中に入れて貰える
なんて

甘いコトを
考えていたのだけれど。


「何だろ?」

先生のマンションの前の
狭い道路に

黒い窓ガラスのワゴン車や
バイクが
何台も止まっていて。

異様に緊迫した空気が
辺り一面に張り詰めていた。


マンションに
入ろうとしていた私の背中に

突き刺さるような
痛い視線ッ。


私がマンションの
入り口にあるボタンを押して
先生の部屋を呼び出すと

何故だか
管理人室に繋がって。


『今日はどなたも通すな、と
言われていますので』

あっけなく
門前払いを食わされるッ。


「あのッ!、私ですッ!!
昨日のゴマフアザラシですッ」


もう一度
よく確認してください、と

監視カメラに近づくも


『……』

管理人室の無反応が
我ながら痛々しいッ。


「…言うんじゃなかったッ」

ゴマフアザラシ、なんて

自らを貶めてまで
食い下がったのにッ。


「どうしよう」

私はマンションの9階を
恨めしく見上げる。


だけど。

「ゴマフアザラシさん?」

失礼な呼びかけに
振り返った瞬間

カメラと目が合ってッ。

目つきの鋭いヒト達に
あっとゆ〜間に
取り囲まれたッ。


「キミ、高校生?」

「9階の住人を
訪ねていたみたいだけれど」

「追い返されてたよね?」

「もしかして
被害者なのかな!?」


…ワイドショーなんかで
よく見た風景ッ。