どんなコトでも
私より
早く出来るようになって
常に
私より優れた人間でいたい
セイだった。
容姿だけでなく
アタマも運動神経も
手先だってセイの方が器用で
私なんか
比べモノにもならないのに…。
神様はどうして
こんな完璧な芸術作品を
私なんぞの弟として
この世に送り出して
しまわれたのかッ!
私はセイにどうしても
コンプレックスばかり
感じてしまうから
最近では
家でも食事以外まともに
顔を合わさなくなっていて。
その食事も
いつもセイを避けて
時間帯を選んでいる
つもりなんだけど
気がつくとこうやって
いつのまにか
セイが隣りに座っている…。
今日だって
ほんのさっきまで
オンナノコに恥ずかしい声を
元気に上げさせておいて
その余韻を味わうでもなく
もうお食事ですか?
「……」
「……」
気まずい空気。
「ただいま〜」
パパがいいタイミングで
帰ってきた!
だけど。
「さっきマンションの入口で
セイの彼女とすれ違ったけど」
なんてッ。
パパってばッ
どうしてそんな話題を
持ち出すかなッ。
「あんなの
彼女じゃないから」
「いつも
お世話になってます、って
挨拶されたぞ〜。
モテるオトコは辛いな〜ッ」
パパも何を
冷やかしているんだかッ!
甘いッ。
親としてあまりにも
甘すぎるとは思いませんかッ!
セイもセイで
席に着いたパパに
ビールをさりげなく
運んできたりして。
親に取り入るのも
とってもお上手ですコトッ。
そんなセイに
「セイはよく気がつくわね」
ニコニコと
満足そうに笑ってる
パパやママには
本当に呆れてしまうッ。
「……」
パパもママも
私とたいして変わらない
フツーの容姿なのに
何の突然変異か
こんなミュータント!
15歳が
こんな色香を放っていても
許されるモノなのだろうか。
指の先っちょだけで扱う
セイの
ナイフやフォークの使い方。
エレガントと言えば
聞こえはいいけどッ。
ハッキリ言って
オトコらしくないッ。