「って」

え。

え。

え…ッ。


「どええええッッ!!!」


私の悲鳴を聞いて

「どうしたのッ!?」

パパとママが血相を変えて
飛んでくるッ!


「落ち着きなさい、トーコッ」

「包丁を離しなさいッ!」

私はパパに
包丁を取り上げられッ。


「あう、あう、あううッ」

感情ばかりが先走って
口からコトバが出てこないッ。


「セイ。トーコはどうしたんだ?」

「…彼氏にキスすら
して貰えない、って

相当ストレスが
溜まってるみたい」

ってッ!

アンタねえええええッ!!!


「そ、そうか。
そういう相談は
セイに乗って貰うのがいいな」

「そうよね。
セイのが適任だわよね」

「あうあうあああああッ」

私とセイを残して

さっさと
ふたりでキッチンから
出て行くなんてッ!!!

パパッ!、ママッ!

この異常な空気に鈍感なのも
大概にして欲しいッ!!!
マジ、お願いですからッ

こんな鬼畜と私を
ふたりっきりになんて
しないでくださいッッ!

腰を抜かして
しゃがみ込んでいた私の
顔を覗き込むようにして

中腰のセイの顔が
近づいてくるッッ!

「!!」

私は思わず自分の口元を
手で押さえ

ガードしたッ!


「…ちいさい頃はキス
いっぱいしてたじゃない?」

それはせいぜい
幼稚園くらいまでの話
でしょうがあああああッ。


「キスされたくらいで
いちいちそんな反応されたら
彼氏、傷つくと思うけど」


ってッ!!!

こんな反応をしちゃうのは

「相手がセイだからに
決まってるでしょおおッ!!」


「何で?」

え。

「…何で、って…」

そりゃあ。

「今のセイとキスなんかしたら
変なビョーキとか貰いそうで
コワイもんッッ!!」

「…俺、変なビョーキなんか
持ってないけど」


「持ってなくてもッ!

セイの傍にいるだけで
オンナノコはみんな
妊娠させられそうだわよッ!」

「……」
「……」