なんてッッ!!!

「トーコさんは
子どもじゃないんだからッ

迷子になったり
しないでしょッ」

ルリちゃんは
私とクボ先輩の手を
強引に引き離すッッ!!!

「……」

…もしかしてッ

これはブラコン、と
ゆ〜ヤツですか?


「ね、ニイニ。
私、あれ乗りたい!!」

「無理だよ。

1時間待ちなんて
ルリはそんなに
並んでられないだろ」

「え〜ッ!」

小学生の口元がとんがった。


「ニイニの前の彼女は
こういうとき
代わりに並んでくれたり
したのにな〜」

ま、前の彼女!?

「キレイで素直で
気が利いてたし

ケッコー便利に使えたのに
どうして
別れちゃったりしたのよお」

ってッ
もしもしもしッ!?

「ルリ。
あんまりワガママ言ってると次は、ないからな」

「ふんッ、だッ!」


…私の前で初めて見せる
クボ先輩の厳しい顔。

クボ先輩でも
怒ったりするコトあるんだな。


何だか凄い新鮮だ。


クボ先輩と言えば

ファーストフードの
バイトの現場でも
笑顔を絶やさないヒトで。


私の数々の失敗に対しても

「よくあるコトだから」

ドンマイ、って

いっつも明るい笑顔で
励ましてくれていた。


嫌な顔とか、困った顔とか
記憶にない。


もちろん

私にだけじゃなく
先輩は老若男女問わず
みんなにもやさしくって。

誰がつけたのか

微笑みの紳士って
恐ろしくレトロなあだ名が
よく似合っていた。


顔もそこそこいいから
クボ先輩目当ての
お客さんもたくさんいて。

春休みのバイトの
最終日なんか

オバサマ達から
抱えきれないくらいの
たくさんのプレゼントを
貰っていたし。

そんな先輩が私なんかに
交際を申し込んでくるなんて

最初は
からかわれているんだと
思っていた。

バイトのみんなの前で
それはそれは、さわやかに

「つきあって貰えませんか」

なんて。

セイに言わせれば

「相当の自信家か
自分を知らないヤツ」

なのだそうだけど。