セイにからかわれる材料を
自ら与えてしまった自分が
情けないッ。
『マジ、迷子なのかよ。
どの辺りにいるんだ?
ねずみ〜らんど内?』
「…ねずみ〜らんどの
入口ゲートのすぐ傍!」
ちょっと見失っただけで
はぐれて
5分も経ってないから、と
役に立たないセイなんて
軽くスルーして
電話を切ろうとしたのに。
『そこから動き回るなよ。
わかりやすい目立つトコロに
立ってろ!』
なんてッ。
エラソーに命令してきてッ。
『電話が塞がってると
ヤツから連絡が入っても
わからないから一旦切るぞ』
5分経っても
ヤツと接触できなかったら
俺に電話するんだぞ、ってッ。
「電話したって
セイに何が出来るって
言うんだかッ!」
『俺を誰だと思ってる?』
「…我が家の長男坊ッ」
『つまらないジョークを
返せるくらい元気なら
大丈夫だな!』
電話の向こう
セイが私の不幸を
嬉しそうに笑ってるッ。
『ねずみ〜らんどは夢の国。
願えば叶う』
保護者が早く
迎えにきてくれるよう
祈ってろ、って
セイは自分の
言いたいコトだけ言って
強引に電話を切った。
「はあああああ…」
ねずみ〜らんどに着いた途端
こんなのって。
私ってホント、ツイてない。
「……」
道行くヒト達は
みんな楽しそうで。
陽射し以上に
みんなの笑顔が眩しいよ。
…それにしても暑いなあ。
「何だか
クラクラしてきたよ」
《…トーコちゃん、16歳…》
「私の名を呼ぶ
幻聴まで聴こえて…」
ってッ!
もしかして今のは
「場内アナウンスッ!?」
通りがかったスタッフの
おねえさんに
確認を入れて貰うと
「お連れさまは医務室の方に
いらっしゃるそうです」
「医務室!?」
予想もしなかった展開に
私は驚きを隠せなかった。
医務室を訪ねると
そこには点滴を受ける
ルリちゃんの姿があって。
「放送で呼び出したりして
悪かったね。
実は僕のケータイ
ルリが家に置いてきちゃった
らしくってさ。
トーコちゃんに
連絡しようと思ったら
ケータイがなくて
マジ、アセッたよ」
クボ先輩が申し訳なさそうに
私にアタマを下げた。